2013年9月6日金曜日

ルッツエルン音楽祭から つづき


こんにちは!
前半はシューベルトの未完成。普通はこの交響曲を演奏するオーケストラの規模、編成はせいぜい14型位まで。これは第一バイオリンのメンバーの数をいいます。14人の第一バイオリン、12人の第二バイオリン、10人のビオラ、8人から10人のチェロ、6人位のコントラバス。これに、楽譜に指定された管楽器と打楽器が入り大体65人から70人位のオーケストラの編成でやるのですがこの祝祭管弦楽団は18型で大編成!奏者はみんなソリストみたいなトップアーティスト達、未完成交響曲は出だしからピアニッシモ、マーラーやブルックナーなら大編成もありだけど未完成交響曲ではどんなことになるのか?
いよいよアバードの登場。
ステージの左手奥からアバードが現れました!想像以上にほっそりとなり指揮台に向う歩き方もどこか辛そうなのです。元気ないな!どうしたのかな?多分同じ印象を超満員のアバードファンの中にはたくさんいたのではないでしょうか。
アバードは割れんばかりの拍手に迎えら指揮台にすっくと立ちました。
コントラバスのピアニッシモで始まる未完成交響曲は固唾をのむ2000名近い満席の静寂の中で八人のコントラバス奏者達のこれ以上無理と思えるほどのピアニッシモで静かに始まりました。
未完成交響曲は二楽章で終わったため当時の交響曲が四楽章まである型式から外れていたため未完成と見なされていたからと言われています?何故シューベルトが三楽章と四楽章を書かなかったかは未だ確かなことは分かっていないのですが、あまりにも美しくあまりにも切なく、地獄から天国への階段を様々な情景を回想しながらゆっくりと歩んで行く物語の様に私には想えるのです。
アバードの演奏は私の描くそれより遥かに静かに優しく淡々と進んで行った様に私には想いました。
オーケストラは、アバードの想いを極限までの優しさ、これだけの大編成のオーケストラとは考えられない位のピアニッシモを随所に散りばめながら囁くような演奏。
後半はなんと22型、チェロだって16人もいるのです。弦楽器だけで約90名、ホルンが八名、総数約120名の大編成!ステージは満杯!客席も満杯、熱気がホールを包みます!
アバード大丈夫かな?10年前のようなエネルギッシュな棒さばきはなくほぼ直立不動で指揮棒を細かく動かしオーケストラに委ねるそのうしろ姿はただそこに立っているだけでオーラがホールを包み、120人の奏者がひたむきに全身でアバードの音楽を奏でる歓びが静寂のピアニッシモから炸裂すりフオルデッシモまでを最後のホルンのロングトーンが消えるまで長大なブルックナーの第九番が終わったのです。アバードの描く大宇宙が壮大で大聖堂で聴くような神々しい響きに包まれたのです。
演奏がおわってもアバード、120人のオーケストラ、満席の聴衆は無の空間に身を委ねその余韻を呼吸すらすることをわすれるほどの心地よい緊張感の中でアバードが解放される一瞬を待ったのです。
やがてアバードは渾身で振り終えたブルックナーの世界から身を解きオーケストラに一礼、その瞬間に聴衆は一斉に大歓声ブラボーと割れんばかりの惜しみない拍手が会場を包みました!
アバードがステージ左手奥にとぼとぼと帰るうしろ姿に改めてありがとう!来年も!
ルッツエルン湖畔でコンサートの余韻に浸りながらのワインはこの上ない至福!素晴らしい音楽との出会いは生きる歓びと感謝の気持ちを改めて感じる一日でした。